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ぽかぽか通信『ご存知ですか?まだある結核』

当院では年4回、『ぽかぽか通信』を発行しております。
今回は平成19年3月発行の『ぽかぽか通信』1面記事をご紹介いたします。
2〜4面でも楽しい内容の記事を掲載しておりますので、当院へお越しの際は是非お手にとってご覧下さい。

担当医画像ご存知ですか?まだある結核
真栄病院 医師/日本結核病学会 評議員  須知 雅史
 昨年9月に終了したNHKの朝の連ドラ「純情きらり」、主人公の桜子は結核で亡くなりました。一人息子の揮一を一度も抱くことなく・・・。
 結核、それはほんの数十年前までは「国民病」とも呼ばれ、恐れられた病です。しかし、現代の日本でも年間3万人近い人が罹る(全世界では約900万 人)、単一の病原体による国内最大級の感染症です。北海道に限っても、平成17年一年間に540人の方が結核に罹りました。結核という病気が、今の日本に まだまだ存在しているという事実、ご存知ですか?
 平成17年一年間の日本における全結核患者数は28,319人、人口十万人に対し22.2でした。前年は23.3でしたので確かに減少しています。しか し、その減少スピードは鈍化し、1960〜70年代には年率10%以上減少していたものが、最近では5%以下になっています。そしてやっかいなのは、感染 性の高い喀痰塗抹陽性肺結核(痰の顕微鏡検査で結核菌が見つかるほど多量の菌を排菌している)患者数の減少スピードが、特に鈍化していることです。その理 由が、20歳代、30歳代の結核が減っていないという事実。過去の病気だと思われている結核が、若い人達の間で確実に生き延びているのです。
 もう一つの特徴は、結核患者に占める高齢者の割合が増加していることです。例えば70歳以上の割合が半数に近くなりました。これは、太平洋戦争前後の結 核が非常に蔓延している時に感染したけれど、幸運にも発病せずに(感染と発病は全く別で、結核に感染しても一生のうちに発病する人はたった2割程度と言わ れています)生き延びてきた人々が、免疫の低下や、免疫抑制剤などの影響で発病するためです(70歳以上の方の6割以上が、結核に既に感染していると言わ れています)。さらに、患者の発生が大都市に集中するようになったのも近年の特徴です。ホームレスなど経済的弱者や生活困窮者に集中するようになってきま した。栄養や生活環境、ストレスなどが影響していると言われています。
 このように、まだまだ元気な結核ですが、この病気を取り巻く医療の進歩はすばらしいものがあります。冒頭の桜子の時代には、有効な抗結核薬がまだ普及し ていませんでした。大気、安静、栄養、つまりきれいな空気を吸い、安静にして栄養をつけ、自然治癒を待つしかありませんでした。しかし現代では、3〜4剤 の抗結核薬を組み合わせ、最短では6ヶ月で治るようになりました。再発もほとんど無くなりました。桜子も揮一を抱き、育てることが出来たでしょう。
 私自身も、12年ほど前に結核に罹りました。喀痰塗抹陽性でした。しかし、抗結核薬のお陰で、こうして真栄病院の一員として働くことが出来ています。世界の結核病学の先輩に心から感謝しています。
 現代の日本でも、結核はまだまだあるということ。そして高齢者では、人生の勲章のように結核菌を持っている可能性が高いので、特に要注意。しかし有効な 治療法もあるので、むやみに恐れる病ではないということ。これらをしっかり理解していただきたいと思います。長引く咳にはご用心。

2007-03-13

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